今回は現代サッカーにおける前線の「守備力」について書いていきます。
①余程の得点力や打開力が無ければ試合にすら使ってもらえない状況に
かつてのサッカーは攻撃、守備が分散されており、前線の選手は最低限の守備(パスコースの限定や突発的に前に出てボールを奪う)で十分で、その頻度が高ければ「献身的」と評されている程でした。
しかし現代サッカーではウイングは勿論の事、トップの選手にも守備力が求められており、それが出来ていないと余程の得点力や打開力が無ければ試合にすら使ってもらえない状況になり、前線の選手の守備力は必須であると言えます。
今回は何故前線の選手の守備力が重要であるかを紐解いていきたいと思います。
②ハイプレスの志向
まず各チームが「ハイプレス」を志向し始めた事にあります。
ハイプレスは高い位置でボールを奪い、奪取できれば一気に決定機を作ることの出来る現代サッカーの象徴とも言える戦術(代表的なのはクロップ監督が志向したゲーゲンプレスです。)ですが選手の連動が必須となっており、一人でもサボってしまうと大きな穴となってしまう戦い方となっています。
その為ハイプレスを仕込むためにはそのメカニズムを理解する判断力、そして献身性が必要であり、それが足りない選手は起用を避けられる傾向にあります。
また守備を固められやすく、また常にカウンターの脅威に晒されるビッグクラブでは常に相手を押し込んで戦うことを求められる為、高い位置でボールを奪うハイプレスは得点効率、そしてボール保持においても非常に効果的と言えます。
2008年から無類の強さを誇り多くのタイトルを獲得した「伝説のチーム」ペップバルサも個々の華麗なテクニックだけに目がいきがちではあるものの、強さの土台となっていたのは敵陣でボールを奪われたら5秒以内に奪い返す「5秒ルール」であり、若き頃のメッシも猛然とプレスに走っていました。
現在もそのグアルディオラ監督率いるマンチェスターシティ、アーセナル、リヴァプール、そしてバイエルン、バルセロナがハイプレスを基軸としており、恐ろしい程のサッカーIQと高い守備強度を誇るレアル・マドリードを除き欧州サッカーのトレンドとなっています。
③求められる強度が高いプレスバック
また両ウイングやセカンドトップ(4-4-1-1の真ん中の1)のプレスバックも当たり前のように求められており、サカやマルティネッリ(共にアーセナル)や三笘や伊東純也(共に日本代表)等は強度が高いプレスバックを行いチームの大きな助けとなって、ウイングバックとしても機能しています。
さらにグリーズマンやミュラー等代名詞となるような選手を含め、ウーデゴールやブルーノ・フェルナンデス等高い守備力を持つ選手をリーダーとして組織的な守備を展開。彼らは攻守において欠かせない存在となっています。
逆に言うとウイングのプレスバックが少ないor守備の意識が薄いチームは守備面で苦しむ事に。パリSGやマンチェスターユナイテッド、ACミランは継続的にハイプレスを戦術に組み込む事が出来ず、苦戦している要因の一つとなっています。
④「特権階級」すら許さない状況に
そんな中話題になっているのはエンバぺとヴィニシウス、ラッシュフォード、レオンで、いずれも結果(得点)を残せていないにも関わらず守備意識の低さが目立ち、チーム不振のやり玉に挙がっています。
ヴィニシウス、ラッシュフォード、レオンに関しては前述したようにプレスバックを必要としているウイングのポジションの選手。エンバぺに関しては1トップに必要なハイプレスの為のコース切りや相手選手のプレー制限すら散漫な様子を見せており、守備面の貢献はゼロに近いものがあります。
ヴィニシウス、レオンに関しては守備時には2トップの一角として起用される等配慮されている様子はあるものの、レアル・マドリードに関しては守備意識の低い選手が二人起用された際に他選手の守備負担が非常に重くのしかかって(特にべリンガム、バルベルデ)おり攻守のバランスを崩している状況。今後はヴィニシウスが再び強度の高い守備を行うか、エンバぺが意識を変えチームの為に走れるかが肝になってきそうです。
因みにラッシュフォードは正直このままではチーム内での序列は下がる一方。現状キャリアの岐路に立たされている状況になっているといっても過言ではありません。
今やかつてのメッシやクリスティアーノ・ロナウドのような「特権階級」すら許さない現代サッカー。今後欧州サッカーがどういう流れになっていくのか、注目です。
では
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