今回は今シーズン限りの現役引退を表明した小野伸二選手について書いていきます。
経歴
小野選手は幼少期から「天才」と評され、高校卒業時には13ものクラブからオファーを受ける等兼ねてから将来を嘱望された選手でした。
そして1998年に浦和レッズに入団すると、即座にチームにフィットし中心選手として活躍。その勢いは衰えず1998年のW杯メンバーに18歳ながら抜擢され日本代表史上最年少で出場。翌年ナイジェリアで開催されたワールドユースでも中心選手として活躍し、累積警告で決勝には出場出来なかったもののチームは準優勝、そして自身もベストイレブンに選ばれる等「黄金世代」の中心的人物になります。
しかしこの年オリンピック予選で左膝靭帯断裂の重傷を負い長期離脱となると、その後も怪我に悩まされるようになり日本代表への参加も散発的になるように。それでもJ2に落ちた浦和を最速でJ１に復帰させる活躍を見せると冬にフェイエノールト（オランダ）への移籍が決定します。
オランダの地で小野選手は初年度からレギュラーとしてプレーすると、いきなりUEFAカップ（現ヨーロッパリーグ）優勝に貢献し欧州を驚かせると、その後も怪我に苦しみながらも中心選手としてプレーします。
そして2006年に浦和レッズに復帰。チームの守備戦術の為にレギュラーを外される事もありながらも天才的なプレーは健在で、その後もボーフム（ドイツ）、清水エスパルス、ウェスタン・シドニー・ワンダラーズFC（オーストラリア）、コンサドーレ札幌、FC琉球でもその技術を遺憾なく発揮。
日本代表では前述した1998年、2002年、2006年と3回出場。いずれも中心選手として輝くことは出来ませんでしたが、随所でその技術を見せてくれました。
そして2023年9月27日に44歳で現役引退を発表。25年間に渡るプロ生活に幕を下ろしました。
①極上のテクニックと一手二手先を見通す視野
小野選手の特長は「極上のテクニックと広い視野」と言えます。
規格外とも言える足元の技術を擁し繊細（過ぎるとも言える）なタッチ、そして足元に吸い付くようなボールキープからタイミング、精度共に申し分ないパスを繰り出していきます。特にトラップの技術は世界最高峰と言え、プロでも真似できないような「神業」を幾度となく見せてくれていました。
またずば抜けた判断力も持ち併せており、ゲームの一手二手先を見通す視野で周りが予想しないようなゲームメイクを行い試合を支配。近年では絶滅種とも言える「ファンタジスタ」の系譜を引く選手であると言えます。
その技術は当時の欧州でもインパクトを残しており、当時一緒にプレーしていたチームメイト（ファン・ペルシ、カイト）やファン・マルワイク監督は「一緒にプレーした中で最もサッカーが上手い選手」と口を揃えて評しています。
②怪我さえ無ければ
しかし小野選手のキャリアでは常に「怪我」という文字が付きまといます。
特に前述したオリンピック予選での左膝靭帯断裂は「足の感覚、そしてサッカーのイメージ全てを失った」と語っているように重大なものとなり、それ以降も後遺症やコンディション不良で苦しむこととなります。
まさしく「怪我さえ無ければ」の代表的選手ではありましたが、それでもそのテクニックやプレービジョンで多くのファンを唸らすプレーで44歳まで現役でプレー。
「僕の相棒として戦ってくれた“足”がそろそろ休ませてくれと言うので」という言葉が本当に心に響く現役生活となりました。
③ベルベット・パス
小野選手で一番先に思いつくのがオランダで「ベルベット・パス」（布のようになめらかで優しいパス）と評されたパスで、特に印象に残っているのはフェイエノールトでのデビュー戦で、後半途中に投入される終了直前にゴールを演出するパスを放つと、ロスタイムには糸を通すようなスルーパスでトマソンのゴールをアシスト。
当時欧州で活躍していたのは中田選手ぐらいで、「通用するのか」と正直思っていた中でのこのプレーだったので当時学生だった私はとてつもない衝撃を受けました。
そしてキリンチャレンジカップでのイングランド戦のゴール。当時ルーニーやベッカムを擁し世界屈指のタレント集団だったチーム相手に先制点を奪われるものの、巧みなパスワークから抜け出した三都主の折り返しを小野選手が合わせゴール。
相手DF（恐らくテリーだったと思います。）の股下を狙って通す技術の結晶のようなシュートは鳥肌が立ちました。
日本史上最高の「天才」と評された小野選手。ゆっくり休んで再びサッカー界に戻ってくれることを願っています。
長い間本当にお疲れさまでした。
では
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