今回はプロ野球でよく出ているワードについて書いていきます。
9回目は「人的補償」です。
①FA移籍に関わる補償
人的補償とはFA移籍に関わる補償の一つで、前球団の旧年俸順に分けられたランキングで上位10位(A、Bランク)の選手移籍の際に旧年俸の50%or40%を前球団へ支払う金銭補償に加えて発生する補償です。
その形式としては
・FA権取得により外国人枠の適用外になった選手を含む外国人選手
・直近のドラフトで獲得した新人選手
・育成契約選手
以外の28名の選手を「プロテクト」して、それに漏れた選手を前球団は1名獲得することが出来るというもので、仮に人的補償を選ばない場合は旧年俸の30%or20%を追加で支払う事で補償され、2008年から現在までこの形でFA移籍が成立していました。
②度々問題になっていたプロテクト対象選手
ただプロテクト対象選手は勿論公表されない為、FA移籍が起こった際には毎回のように話題に。特に誰がプロテクトから「外れる」かが議論になっていました。
そして提出する球団、選ぶ球団によっても問題が起こっており、最近では
・プロテクト枠節約の為に選手と支配化契約の選手と育成契約を結ぶ
・残留前提のFA宣言でその選手をプロテクト枠から外す(FA宣言者は支配下選手登録公示まで所属球団の契約保留選手から外れているので実質枠が空く)
等様々な「プロテクト枠外し」にも捉えられない出来事が起こっており問題に。このような制度の隙を突く方法が編み出され、制度見直しの声は挙がることになります。
③制度自体が揺らぐ事態に
しかし先日FAで山川選手がソフトバンクに移籍した際の人的補償の件で事件が起こります。
1月11日の朝、日刊スポーツを始め地元放送局が報道したのは「和田投手が人的補償で西武移籍」というもの。昨シーズン8勝を挙げ、尚且つ生え抜きで人気の高い42歳のベテラン左腕の獲得報道にはプロテクトを外したソフトバンク側の経営陣に大きな批判が集まる事になりました。
しかしその日の夕刊では「甲斐野投手の移籍が決定」という報道が、、、。この二転三転する状況は様々な憶測を呼ぶことになり、事態は大事になっていきます。(当初は誤報という話もあったものの複数のメディアが報道した事、その中には大本営が含まれていたことから信ぴょう性は高くなっています。)
そこから再び取り上げられるようになったのは所謂「岩瀬式プロテクト」で、概要としては当時中日に所属していた岩瀬投手が
・チームに長年貢献した選手
・高齢で年俸が高い
・「選ぶわけないだろう」という楽観的な観点(上記の理由に併せて兼任コーチも務めていた為)
という理由から人的補償のプロテクトから外したものの選ばれ、選手側から「引退」(正確には移籍後に引退)することを示唆されることに。そして最終的にその事情を見かねた相手サイド(日本ハム)が金銭補償を選択したという疑惑で、信ぴょう性は確かでは無いものの制度上の抜け道が存在するという事実が大きく注目されていました。
今回の和田投手の件はこの岩瀬式プロテクトに似ているものの、大きく違うのは「代わりに」甲斐野投手が選ばれた事で、
・和田投手が上記の例のように引退をちらつかせ、甲斐野投手に変えさせた
・ソフトバンク側が反響の大きさなどを考え、両球団が話し合って方針を転換
下等多くの推察が行われていますが一番問題になっているのは
・甲斐野投手がプロテクト内であった場合、球団の話し合いでプロテクトの調整を行うことが出来る
・一選手の意見だけで人的補償選手を変更することが出来る
ことで、制度自体が揺らぐ事態になっています。
正直人的補償は前々から撤廃が提案されているものの、単純に無くすだけでは所謂「獲られ損」となっており、今後は制度の見直しや、新たな補償制度を設けることが必要になってくるでしょう。
今回でスポーツ界では一番選手や球団がイメージダウンしてしまう要素である「裏取引や密約」が露呈したと言える一件。制度が出来てから15年、そろそろ本格的に見直してくる時が来たのかもしれませんね。
では
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