今回はW杯における「ジャイアントキリング」について、
・両チームの背景
・戦術的な要因
・その後の両チーム
を中心に書いていきます。
1回目は「2002年日韓W杯 セネガルvsフランス」です。
両チームのスタメン&結果
①大黒柱の離脱と初のW杯出場
2002年当時のフランス代表は正に「黄金時代」を築いていました。1998年の自国開催でのW杯で初制覇。その後のユーロ2000も優勝する等大舞台で結果を残し、アンリ(アーセナル)、トレゼゲ(ユベントス)、シセ(オセール)等各国の得点王を要する等、課題であった攻撃力もアップ。ややスピード不足の守備陣は気になる所でもありましたが、絶対的な優勝候補として挙げられていました。しかし大会直前の親善試合で大黒柱ジダンが負傷し欠場が決定。それでもジョルカエフ(ボルトン)やミクー(パルマ)等代役になる選手は十分であると評されグループリーグ突破は固いものであるとされていました。
対するセネガルは2002年のネーションズカップでは準優勝に輝いたもののW杯出場は今回で初めて、、ファディガ(オセール)、ディオプ(ランス)、ディウフ(ランス)等タレントは揃っていましたがフランスとの差は歴然で(殆どの選手がフランスリーグでプレーしており、評価が固まっていたので未知数でもありませんでした。)、初戦での勝利は極めて困難とされました。
②機能しないと攻撃磨かれた堅守速攻
そして迎えた開幕戦。フランス代表はジダンの代わりにジョルカエフを起用したこれまで通りの形を採用します。対するセネガル代表は「白い魔術師」ことメツ監督がフランスの布陣に合わせアンカー(現セネガル代表監督のアリウ・シセ)を配置した4-1-4-1を採用。アフリカ人特有の身体能力に併せ、組織力を植え付けた守備でフランス代表を迎え撃ちました。
その戦略は見事にハマり、フランス代表の攻撃は見事に分断。司令塔タイプであるジダンに対してジョルカエフはセカンドストライカー寄りの選手で、アンリ、トレゼゲ、ヴィルトールを要する豪華攻撃陣を上手く生かせず攻撃は機能不全に。また快速ウインガー+ディウフを要するセネガル攻撃陣のカウンターにフランス守備陣は手こずらされ、前半30分にディウフのサイドでの突破からディオプが押し込み先制点を挙げます。
その後フランスもデュガリー、シセを投入するも最後までセネガル守備陣を崩すことが出来ず試合終了。
W杯初出場の国が前回王者を破るジャイアントキリングとなりました。
③屈辱の予選敗退とベスト8への躍進
その後フランスは続く2戦目もウルグアイに引き分け、3戦目のデンマーク戦ではジダンが強行出場するものの0-2の敗北を喫しグループリーグ敗退となりました。太ももをテーピングでガチガチに巻き付け、バランスを崩し前のめりになる痛々しいジダンの姿が今も目に焼き付いています。
一方セネガルは2戦目のデンマーク戦でもメツ監督の采配が光り1-1のドロー。続くウルグアイ戦では前半だけで3点差を付けるも追いつかれ3-3のドロー。しかしデンマークに続き2位通過を果たすと、決勝トーナメント1回戦のスウェーデン戦ではアンリ・カマラがゴールデンゴールを含む2得点と躍動。
準々決勝ではトルコのイルハンのゴールデンゴールに沈みベスト8に終わりますが、そのインパクトは凄まじく、ディウフとディアオはイングランドのリヴァプールに、ファディガは2003年はインテルに移籍する等、中心選手達はステップアップしていくこととなります。
油断もあったのか中心選手を失ってもろくに対策しなかったフランス、そして知将の元綿密な対策を行い見事に遂行させたセネガル。決して偶発的ではなく、お互いの「準備力」が明暗を分けたジャイアントキリングでした。
では
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